横浜家庭裁判所小田原支部 昭和41年(少)122号 決定 1966年3月03日
少年 G・T(昭二五・一二・八生)
主文
少年を医療少年院に送致する。
押収にかかる旧軍用銃剣一本(昭和四〇年押第三五号の一)および銃剣のケース一本(前同号の三)はこれを没取する。
理由
(非行事実および適条)
別紙のとおり
(要保護性)
少年は別紙(1)ないし(7)の非行事実により昭和四〇年一二月九日当裁判所において審判をうけたが当裁判所において少年に対する調査、鑑別、審判の結果感得された諸般の情状を考慮し、保護者のもとにおける少年の更生にかなりの期待をもって一応少年を在宅試験観察処分に付したところ、間もなく家出し一ヶ月足らずで別紙(8)の強盗の非行を犯すにいたった。
現時点において少年の非行の態様をみると、いづれも凶器を所持して人をおどかす悪質なものであり、この種の犯罪に対する親近性が看取されるのであるが、その非行の原因については少年の生育歴、母親欠損の家庭環境、性格等の諸要因がからみあって複雑な様相をもっていることが伺がわれなくもないのであり、殊に少年に対する第二回鑑別結果によれば少年には激しい情動障害があり、基底に脳の器質的な障害が考えられる旨の鑑別結果が出ており、この様な器質的な面と本件非行の態様を併わせ考えるとその危険性は容易に看過すべからざるものがあると思われるので、なお少年の心身の鑑別精査の意味を含めて少年を医療少年院に送致することとする。
よって少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条第五項、没取につき少年法第二四条の二を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 佐々木一雄)
別紙
(犯罪事実)
少年は
(1)、昭和四〇年一〇月○日に家出し、その後正当な理由がないのに家庭に寄りつかないもので、その性格および環境に照して将来罪を犯す虞があり
(2)、同年一一月○日午前九時四〇分頃平塚市○○○○△の○○番地平塚市立○○中学校々庭において、銃剣所持を注意に来た担任教師○井○彦に対し銃剣を振りかざし、「近寄るな、それ以上近寄ればばらすぞ」と怒号して同人の生命身体に危害を加える旨脅迫し
(3)、その直後同校二年二組教室に到り、自習中の同校二年生○崎○○子(一四年)を人質にして逃走しようと企て、同女に対して銃剣を突き付けて「俺は先生三人を殺した、お前は人質として連れて行く、ついて来い」と申向けて脅迫し、同人の腕を掴み同日午後〇時五〇分位迄の間神奈川県中郡大磯町○○×××番地○上○雄方居宅迄の間約七・三粁に亘って連行し、以って同女を略取し、
(4)、同日午前一一時三〇分頃平塚市○○×××番地所在遊園地○○平において、ハイキングに来ていた○子志○子(一六年)および○下○○子(一六年)両名に対し銃剣を突き付け、「金を出せ」と申向けて脅迫し金員を強取しようとしたが、同女等が所持金がなかった為その目的を遂げず
(5)、同日午後〇時三〇分頃前記○上○雄方庭先に於いて、森○子外四名に対し銃剣を突き付け、「俺は今先生を四人殺して来た、動くと刺すぞ、金を出せ」と申向けて脅迫しその反抗を抑圧し同人外三名より合計二三三二円を強取し
(6)、その直後同所△△△番地○辺○○知方前路上に於いて、自動車運転手○田○一の横脇に銃剣を突き付け、「俺の言う通りに車を動かせ、動かさないと刺すぞ」と申向けて脅迫し、同人をして大磯町○○△△△番地先東海道線踏切まで約二〇〇米の間自動車を運転させ以って義務なきことを行わせ
(7)、法定の除外事由なくして同年八月下旬より一一月○日迄の間平塚市○○○○×の○○号の自宅に於いて刃渡り約三九糎の銃剣振を所持し
(8)、昭和四一年一月○日より足柄下郡箱根町○○○××番地温泉旅館○形屋こと前○二○江方に投宿中であったが、一月○○日投宿代を請求されるや強盗を企て、同日午後一〇時五〇分頃同館二階鷹の巣間に押入り、同間に投宿就寝中の山梨県富士吉田市○○○××××番地金物商○辺○訓四九歳および同人の妻○江四八歳の両名に対し刃渡三三・五糎の刺身庖丁を突きつけ、「騒ぐと殺すぞ、金を出せ」と脅迫し、更に所携の針金、細紐で両名の手足を縛りその反抗を抑圧し、前記○辺○訓所有の現金四八、八〇〇円を強取し
たものである。
(適条)
(1)、の事実につき 少年法第三条第一項第三号
(2)、の事実につき 刑法第二二二条
(3)、の事実につき 刑法第二二四条
(4)、の事実につき 刑法第二三六条第一項、第二四三条
(5)、の事実につき 刑法第二三六条第一項
(6)、の事実につき 刑法第二二三条第一項
(7)、の事実につき 銃砲刀剣類所持等取締法第二二条、第三二条二号
(8)、の事実につき 刑法第二三六条第一項、銃砲刀剣類所持等取締法第二二条、第三二条第二号
参考1 少年調査票<省略>
参考2 鑑別結果通知書<省略>